「ねぇ・・・?秀樹・・・?」
繭子は、二階の部屋の扉を開き、部屋の中に入って来た中川に、突然、抱き付いた。
「おい、お盆持ってんだぜ?グラス、落っこちて割れちゃうよ?」
「良いから・・・。ねぇ?早くしてよ。縛っちゃって?私の腕・・・。」
繭子の積極的な言葉を聞き、益々、中川は、意気消沈した―\r
「未だ・・・、早いって。シャンパン空けるだろ?それに・・・、シャワーは?浴びないの?繭子は、いつも先にシャワー浴びてたじゃんか。」
繭子は、思い出した様に、中川の身体から離れ、頷くとこう言った。
「そっか・・・。シャワー浴びなきゃね。私、必死過ぎた?じゃあ・・・、軽くシャワー浴びて来るから、秀樹、シャンパンのコルク抜いて置いて?・・・、此処・・・、だよね?バスルームって。」
中川も、繭子の言葉に頷いた。
「必死って言うか、繭子のそう言う、挑発的なの・・・、そそるよ。シャンパンの栓、抜いとく・・・。バスルーム、此処だから。」
中川は、部屋の中に有る、ガラス張りのバスルームの扉を開き、繭子を案内すると、ガラスが曇り出した事を確認して、持って居たお盆を、ベットの隣に有る、サイドボードに置き、シャンパンの栓を抜いた―\r
グラス二つに、シャンパンを注ぐと、先程、一階から持って来た睡眠薬を、ポケットから、静かに出し、グラスの一つに、サラサラと混入させた。
二、三分程して、バスルームの扉が開いた。
「もう、シャンパン注いじゃったの?温くなっちゃうじゃない・・・。」
「大丈夫だよ。今、入れたばっかだからさ。・・・、着替えは?無いだろ?」
「着替えなんか要らないわよ・・・。バスタオル巻いて出るから、良い。」
「そうか・・・?繭子が良いって言うなら、俺は良いけど・・・。」
繭子は、そそくさと、バスルームから出て、ベットの端に、腰掛けた。
中川の胸は、異常に高鳴って居た―\r
先程、睡眠薬を混入させた方のグラスを、迷う事無く、繭子に手渡した。
「乾杯・・・。」
グラスを軽く当てると、中川は、繭子の顔を凝視した。
「はぁ〜っっ!!美味しい!久し振り、シャンパンなんて。」
何も知らない繭子は、一気に、グラスに注がれたシャンパンを飲み干した。
「そう・・・、良かった。シャンパンなら、腐る程有るよ、一階に。沢山飲んで良いよ?」
「ほんと〜?私、好きなのよね、シャンパン。ねぇ・・・?秀樹?早くさっきのガムテープで縛ってよ、私の腕。」
「まだ、飲むだろ?早いって。縛ったら、飲めないよ?」
「良いから・・・。ねぇ?早く。」
中川は、繭子に促され、床から拾い上げたガムテープを、細い両腕に巻き着けた―