気付けば11時を過ぎている。そろそろ戻らないと地元を離れている分、厳しいので2人は店を出た。
秀人はお酒に強い。結構飲んでいたが顔色一つ変わっていない。
ただ、テンションはいつもより高いから、ホロ酔いでは有るようだ。帰り道も会話は尽きないし、笑いすぎてお腹が筋肉痛になりそうだった。
車は順調に地元へと向かっている。
その時、道路脇に有る温度計が目に付く。零度だ。
「外は寒いじゃんねぇ。車内、寒くない??真希ゎ冷え症だから手が寒いょ〜」
「俺ゎ冷え症ないし、飲んでるから全然平気だょ。女の人ってそぅぃうの有るから大変だょなぁ」
秀人を見ると雲の合間からたまに星を見せている夜空を見上げている。
「いぃなぁ〜体温チョット分けてくれよぅ。」
私は冗談ぽく秀人の手に自分の手を重ねた。
「……真希の手、ホントに冷たいのな〜。」
いつにない優しい声で秀人は呟く。
私は息を呑んだ。
次の瞬間、秀人の指が絡み付き、頭が肩に持たれ掛かってきた。
私の鼓動が早くなる。しばしの沈黙。一分一秒が長い。何か話さなくてはと思うものの、突然の出来事に言葉が出てこない。冷え切った指先が次第に熱を帯びて行くのを感じた。いつしか秀人の手の温もりより暖かくなっている指先に恥ずかしさが込み上げ、全身が火照って行く。
沈黙は続きエンジン音と車のオーディオの音だけが静かに流れていた。