結衣子は、それとなく、翔の気持ちを察していた。
起きて階下に降りれば、食事の支度が出来ていて、家があり、そこそこの暮らしが出来ていれば、外であくせく働かなくても良いじゃあないかと思う若者が増えていることは知っていた。と、いうか、それではいけない、若者よ、汗を流して働こうと呼び掛ける側のカウンセリングをしてきた。随分、成果もあった。まさかの、息子の有り様に、やるせなさのなかにいた。
自分に助けを求めて下さった保護者の気持ちが解る気がしていた。翔の場合が明らかに病的なケースではなく、世の中との抗いからかけ離れているだけだという事実が重かった。