子供のセカイ。136

アンヌ  2010-01-19投稿
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後ろから強く肩を押されて、王子は壁に叩きつけられた。ずるずると壁づたいに座り込んだところを、ジーナが庇うように王子の脇ににじり寄り、叩きつけた張本人であるハントを凄まじい目つきで睨む。
そこは牢のような場所だった。鉄格子がはまり、三方は壁に囲まれている。むき出しの地面には何もなく、ただ鉄格子についた扉の前に立った無表情のハントが、くるくると牢の鍵を回しながら二人を冷徹な目で見下ろしていた。さらに牢の外には、彼の部隊の若者たちが数名と、あの金髪碧眼の魂の分け身が、至極不機嫌そうな顔で腕を組んで立っていた。
王子とジーナは二人共、腕を後ろ手に縛られ、さらに足には足枷がかけられていた。ジーナは口はしが切れている程度で、大した怪我はなかったが、王子はひどい有り様だった。砂漠で受けた傷を癒したばかりだというのに、目の上には青あざがくっきりと浮き、さらに服に隠れて見えないが、腹部や背中、足など、何ヵ所にも渡って殴られたり蹴られたりした痕が残っていた。
ジーナは後ろ手に縛られた拳を強く握り締めた。
「貴様……いつか殺してやる!」
「ハッ。その程度で済んだことを有難いと思えっつーの。」
ハントは馬鹿にしたように笑うと、くるりと踵を返して牢から出ていった。ガシャン、と鈍い音がし、無情にも扉が閉まる。直ぐさま鍵がかけられ、鉄格子越しにハントが声を放った。
「お前たちには明日から働いてもらう。しかも、とびっきり危険な区域でな。」
「……私はいいが、王子は少し休ませろ。この怪我じゃ、働くどころではないだろう。」
「ダメだな。何のためにお前らを消さずにおいてやったと思ってんだ?」
ハントは急にころりと態度を変えると、今度はへりくだった仕草で、魂の分け身の子供の前に膝をついた。
「貴方様が怒りをお鎮めになったのも、すべては覇王様の計画のため。そうですよね?」
猫なで声を出すハントを、王子の体を肩で支えてやりながら、ジーナは呆れて眺めていた。監査員には些か不似合いなパジャマ姿の少年は、優遇されることが嬉しくて仕方がないといった様子で、ふんぞり返って顎を高く突き上げた。
「そうさ。ぼくは賢いからね。ちゃんと計画のことを一番に考えて動いてるんだ。」
少年は人差し指をジーナたちに突きつけながらニタニタと笑った。



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