翌朝、奈緒美は目を腫らしていた。仕事する気にはなれなかったが一人で居たくはなかったので行く事にした。「夕べは結局電話も無かった…最悪だ」
その時電話の音がした、待っていたのに出たくない複雑な心境で「もしもし」
「もしもし奈緒美さん?どうしたんですか!留守電聞いてビックリしました」
「久しぶりね、もう会えないと思ったわ」
「すいません、バタバタしてまして」
「言い訳は良いわよ、雑誌見たわよ!鮎川潤一の」
「えっ!」「ごめんなさい私見たの!最後に会った夜、聡が持っていた原稿を。てっきり聡の小説だと思ったわ…でも違っていたみたいね、わたしは誰かの為に利用されていただけだったのかしら?」
「待って、そんなんじゃない!時期が来たらちゃんと話すつもりでした」
「何て話すつもり!?騙してすいませんでしたとか言うつもりだったの!」
「…」「もう良いわよ、これ以上傷つきたくない!」サヨナラ!
精一杯の強がりを奈緒美は後悔しつつ、それ以上に傷く事が怖く悲しかった。
「バカだ!わたしはバカみたいだ!」ただ自分を責めた。「時間を下さい、今は何も言えません!」聡の気持ちを察することができないまま電話を切った