チンゲンサイ。<27>

麻呂  2010-01-20投稿
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『ユウ!!娯楽施設は4階だったな!?
エレベーターは、こっちだ!!』



ユウも俺も、親子揃ってコイツらに殴られ、既に体力を消耗しきっていた。



ならば出来るだけ、これ以上は体力を消耗させずに、コイツらから逃げ切らなければならない。



『だ、駄目だ親父!!エレベーターを待ってる時間なんてないよ!!

すぐ追い付かれるって!!』



『よしっっ!!

ならば階段だ!!

ユウ!!頑張れ!!
4階まで行けば人がいるし、何とかなる!!』



正直な所、俺は5人の若者から逃げ切る自信が無かった。



しかし、俺の中で、ここは何としても逃げ切らなければならない理由があった。


逃げ切れたら!?



俺は年頃の息子の気持ちが、少しは理解出来る様な気がする。



くだらない。



馬鹿げているかも知れない。



しかし、俺にとってこれは、自分の中での1つの賭けなのだ。



『待てコラアァァ―――ッッ!!

俺らから逃げ切れるとでも思ってんのかアァァ!?

“こども銀行券”とは馬鹿にしやがって!!

貴様ら2人、俺様が2度とフザケたマネ出来ね―様にしてやるゼ!!』



全力で階段を駆け上がるユウと俺の背後から、



リーダー格の男の怒声が響き渡り、後続の4人も何やらわめいている。



館内を巡回しているはずの警備員も、これだけの大声に気付かない訳はない。



目指すは4階だ。



人が多く集まる4階まで、絶対に逃げ切るのだ。



『あっ!!親父危ないッッ!!後ろ!!』



ユウを先に走らせ、そのすぐ後ろに付いていた俺の肩に、



徐々に距離を縮めて来たリーダー格の男が、手を掛けようとしていたのだ。



しかし俺は気付いていた――



『コレでも食らえ!ッッ!握りっぺ!!』



自慢ではあるが、俺は自分の屁を、自由自在に操る事が出来る。



まさか、こんな緊迫した場面で、この技が役に立つとは思いも寄らなかった。



『ぐっっ、グハアァァァァァァ〜〜ッッ!!』



男が撃沈し、その場でもがき苦しんでいる隙に、



ユウと俺は、着々と目指すゴールの4階に近付いていた。



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