ある日の夜、義人と剛夫は、久しぶりに食事をしていた。
「哲ちゃんからメールきた。なんだか、こんがらがってるって」
「来たよ。てゆうか、電話で直接相談されたよ」
「相談?珍しいなあ。いつもは、スパッと判断するのになあ。恋愛ごとも…」
「昔がよぎったよ。あいつの代わりに殴られた…」
「ああ…。あん時は、やられ損だもんな。」
「まあ、俺は昔から、そんな役まわりだし、しかたねえけどね…」
「で、どんなこと言った?」
「今度は、自分で判断しろと。さすがに、今回は、代わりに誤んねえよ」
「でもさあ、なんだかんだ言って、引き受けちゃうんだろよ?」
「冗談だろ?確かに出会いのきっかけ作ったのは、俺だけど、いくら親友とはいえ、ガキじゃないんだから」
しばらくの愚痴を言った義人は、剛夫に質問をした。
「ところでよ。9月にまた行く予定だけど、どうなのよ?一緒に行けそうか?」
「まあ…なんとか、行けそうだけど、俺は、あんたらみたいに金はかけられないよ」
「そこまで、求めてないよ。旅行なんて、近場で済ませてきた俺らが、遠出してゆっくりすることに意義があるんだからさ…」
「なら、いいんだけどさ」
「それに、俺らは友達少ないし、あまり出歩かないから、浪費もしないし、旅行までは、無駄遣いしないからさ…何より独身で、実家住まいだからな…」
「情けないけどね…(笑)」
「しゃーないだろ。この不況下、一人暮らしは勇気いるよ…」
「まあ…なんとかするよ」
「期待してるぞ。
ところで、お前の職場には、いないのかよ。年頃の女性は」
「いるけどね…。バツイチで、しかも子持ち」
「どうなんだよ?相手としては」
「いろいろとあるからなあ…。紹介してやろうか?」
「それは…」
「まあ、何人かいるけど、揃いも揃って、酒豪なんだよねえ。酒駄目だろ。俺ら。」
「そうだな…」
哲彦の時とは違い、いつも尻つぼみに終わってしまうのが剛夫と義人の会話だが、2人に思いもよらぬ展開が待ち受けていることを、知る由もなかった。