〜谷底より少し上〜 シャドーフォックスと真紅のガンスナイパーは着実に上へと進んでいた。辺りには石化したゾイドの残骸が転がっている。「薄気味悪いわね」「仕方ないさ、ここは野良ゾイドでも滅多な事が無い限り近づかない程危険な場所。金に目が眩んだ盗賊の道連れだろう」視界の端に、不穏な動きを見せる影が映る。電光石火の早業で、フォックスは喉元を捕らえた。「チッ…カノントータスか…」背中の咆頭を捻曲げ、主砲を奪った後「ナオミ、こいつに吐止めを刺せ」「は?」「今のフォックスの体勢じゃストライクレーザークローを撃てないんだ」「そうじゃなくて…!」彼女の心境を察したように、言葉を遮る。「わかってる。けどな、このまま放っておいてもどのみち俺達の邪魔をするか谷底の針岩に貫かれて終わりなんだ。道を遮られるより、岩に貫かれるより、一発で仕留めた方がこいつのためだ」「……」バラッドとしても、苦渋の決断だった。昔は(といっても2年前〜)愛着なんて沸かなかったのに、今は、フォックスがいなくなることなど考えられない。他のゾイドに対しても似たようなものだ。「……解った。」コックピットを反転させて、スナイパーモードに移行。零距離射撃の体勢をとる。いつものバトルとは違うのだ。システムフリーズじゃない。核を、一発の弾で貫く。標準など定め様が無い。トリガーを引く音に、弾丸発射の音が重なる……………