どうやら私は無事に死ねたらしい。無事にというのは、何事も無くということだ。
タオルを巻いたロープによる自殺方法で苦しむことなく死ぬことができた。まるで眠るように。
それにしても周りが騒がしい。やっと自分の状況を悟った。
なるほど今私は浮遊霊なのか。中学校の登校風景を教室の隅から眺めている。
いつもとかわらない3年2組の教室。あぁ一つだけあるか。
私の死亡宣告。
担任が来た。どれ、一生に一度…いや普通はない経験。まあ心してきくか。
「今日欠席の菅谷だが、貧血らしい」
どういうことだ?私は確かに…。
まあいい、自分の目で確認するだけ。そして私が生きていたら、もう一度私を殺す。
信じられない。私は生きていた。それも悠長にテレビを見ている。
頭に来た。私がどんな思いで死を選んだと思っている。こんな馬鹿げたこと許せない。
絶対に殺す。
憎悪で私を殺せる。そう確信をもって、首に手をかけた。
「なっ」
あろうことか私を羽交い締めにしてきた。
「お前が私ならおとなしく死ね!」
「どうしてわからないかな。自分の気持ちを」
気がつくと私は部屋の中央で佇んでいた。