ヤミ金は元気の顔を殴りつけた。
「やめてください…。」
「どうせ押し入れにもいるんだろ?」
と言って押し入れを開けた。
元気はヤミ金の足にすがりつく。
「やめろ…。そこだけは…。」
「ほ〜ら。いるじゃん。可愛くない妹が。」
「キャー!」
陽菜は悲鳴をあげている。「陽菜!」
ヤミ金は容赦なく陽菜も殴りつけ、
「金が無いんじゃ、殴られるしかねぇんだよ。」
その言葉が、3人の胸に突き刺さった。
ヤミ金は、テーブルを蹴り飛ばし去っていった。
お母さんは、泣いていて、陽菜は殴られた所を痛そうに手で覆っていて、
元気は、ただ立ち尽くしていた。
「ごめんなさい…。元気。陽菜。こんなことになってしまって…。」
お母さんは、泣きながら謝っていた。
「いいよ。母ちゃんが謝ることじゃねぇし。」
元気はすぐに立ち上がって、食事の用意を再開した。「みんな。メシできたぞ。」
テーブルを立て直した元気は、小さいテーブルの上に、目玉焼きを置いた。
「いただきます。」
3人はあいさつをして、食べはじめた。元気は陽菜のほおが少し腫れているのに気づいた。
「陽菜。ほっぺ腫れてるぞ。」
「大丈夫。お兄ちゃんこそ、腫れてる。」
「そ…そうか?アハハハ。」
元気は笑って、その場を盛り上げようとしたが、みんなうつむいていた。
話を聞いてくれてはいるようだから、元気は口を尖らせて、ご飯を食べた。
静かな時が、流れていく。
ご飯を食べおわり、元気が後片付けをしていたら、急に陽菜がズボンの裾をつかんできた。
「どうした?」
「河原に行きたい。」
元気は、「分かった」と言って、2人で河原に行くことにした。
河原はよく陽菜と行く。特に用は無いんだけど、心を落ち着かせるために。
「じゃ、母ちゃん。行ってきます。」