サークルチェンジ #33

Hollow Man  2010-01-25投稿
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「いらっしゃい。」
白髪の店主が金色の縁をした眼鏡を下にずらし、裸眼で隼人たちを確認する。

「あの、ピッチカバーを新しいのに替えてほしんですけど…」
隼人は早速スパイクをカウンター越しに手渡す。

店主はそれまで睨み合っていた帳簿をたたみ横にやると、受け取ったスパイクに目を凝らす。
「うーん…ちょっとかかるよ。」
無愛想にそう言い残し、奥へ入っていく。

平日の昼間ということもあり、店内の客は隼人と青山しかいない。隼人のピッチングカバーを取り替えてもらう間、二人は商品を見て回ることにした。

壁にはプロ野球やメジャーリーグの選手ポスターが貼られ、ショーケースにはグラブやスパイクなどが並んでいる。

「あ、今日どうせなら道具揃えとかないか?硬式用高いし、グラブは部室に余ってるから練習着とスパイクだけ買っときゃいいよ。」
隼人は青山に助言を交えながら提案する。

「そのつもりで金は持ってきたんだけど、なんつーか、俺のセンスに合うのがねーなー。」
青山は取っ替え引っ替え商品を手にしながら呟く。

すると、隼人は横柄な青山に剣幕を立てた。
(こいつ、どんだけナルシストなんだよ…)
「あのな、野球はファッションじゃねんだよ!んな甘ったれたもんと一緒にすんな!」

「黒沢って野球のことになるとマジになるんだな…」
青山は真剣に道具選びを始める。

しばらくしてある程度道具選びにメドが立った青山。ふと、店内の端を見渡すと一本のバットが目に止まった。

「あっこれなんかよくね?」
青山が惹かれるまま手に取ったバットは漆黒の光沢を放ち、先端から芯の辺りにかけてOHTENTA-TGという文字が銀色の斜体で印されている。

「これどこのメーカーだ?」
バットをかざし、感触を確かめながらまじまじと見つめる。

と、その時ピッチングカバーの交換を済ませた店主が奥からカウンターへ戻ってきた。

「はい、できたよ。」
店主の手には右足側のカバーが取り替えられた上、綺麗に磨き上げられ新品のようなツヤを取り戻したスパイクが握られている。
隼人にそれを手渡すや否や、店主は青山に目を向け、
「兄ちゃんそのバットに興味あるんか?兄ちゃんには無理無理。使いこなせんよ。」
嘲笑を含みながら挑発的な言葉を発した。

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