「何…この人の数…」
「人口密度高いな…」
「「うわぁ…」」
bearの店員が口々に言う中、あたしと香菜は目を輝かせてその景色を見つめる。
先週、無事にあたし達は卒業式を終えた。
皆、大号泣でうまく喋ることすら出来なかった。
あたしもその1人で最後の最後まで泣き止む事はなかった。
でも次の週にはすっかり変わって今日のお祭りを楽しみにしていた。
「皆さん、早く行きましょう!」
「行こう!行こーう!」
あたし達は猛スピードで人ごみの中に紛れていった。
この春祭りは朝から、夜までやっている。
毎年たくさんの人で賑わうこの町独自のイベント。
あたし達はお店があったため、朝から行くことは出来ず、少し暗くなった頃にbearスタッフ全員でやってきた。
―あ…
30分程香菜と回っていると、少し前に店長と2人で歩いている高峰智がいた。
「あれ高峰さんだね」
香菜も気付いたようであたしにつぶやく。
「よし」
「?!」
あたしは香菜に急に腕を引っ張られた。
「ちょ、香菜?!」