「いくら頑張ったところで、零は零なのだから。
俺は俺でしかない。
だったら、俺は俺でいかしてもらう。」
満身創痍の赤髪のそいつが息を切らしながら、そう僕に言う。と、そこで一陣の風が吹いた。一昨日からの快晴のせいで、からからに乾いた砂が巻き上がる。細かい砂粒が目に入り、思わず目をつむった。
そして、もう一度目を開けたときにはそいつはもういなかった。
「神の子、か。なんだそれ。」
軽い倦怠感が肩にのしかかってきて、瞼がゆっくりと落ちる。
そりゃ、そうだよな。あれから、一度も満足に眠れていないんだ。
【盤上(チェス)】と、僕らが呼んだこの争いが始まったのは、今から一週間前だ。いま、落ち着いて考えてみると本当にいろんなことがありすぎた。
本当に、ありすぎた。
いい加減、少しぐらい眠らせろ。
なあに、どうせあと三日で終わるんだ。
「神の子だなんて、ふざけるな。僕はこんな争い、おりる。」
〜つづく〜