永久に§10§

夏姫  2010-01-29投稿
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結局、その日の学校帰りにサイにメールをしてみた。

《お疲れさま。1時間だけでいいから相手してくれない?》

…3分後。

サイからの返信は無かった。

5分、10分…。

いくら時間が過ぎても、サイから連絡はない。
私の心に、焦りだけが走る。
仕方なく、私はサイに電話をしてみる事にした。

『――お客様の都合により、ツウワガデキマセン――』

……え?

頭の中が真っ白になった。
思考回路がショートし、思わず携帯を落としそうになる。

…どうして? 何で?

メールが返ってこない理由が、分かった気がした。

…私は、捨てられたの?

答えの出ない疑問が、頭の中を駆け巡った。


そう言えば…、と昨日の電話の事が蘇った。
見知らぬ番号。
家電のだ。

…もしかして、あれはサイの実家の番号…。

その考えが頭に浮かんだ。
私はいてもたってもいられなくなり、その番号にかけてみた。

『もしもーし。』

受話器越しに女の人の声が聞こえた。

「あ、あの…。」

私はそこがサイの家かどうか尋ねた。
女の人は、そうだと答えた。
そして私は、サイにかわって貰えるように頼んだ。

『…はい?』

いつもより低く聞こえる声。
それが家族の前だからという事も分かっている。
これは、サイの声だ。

「私が誰だか分かる?(笑)」

私は思わず浮かんだニヤニヤ笑いをしながら言った。

『…もしかして?』

受話器の向こう側で、サイの笑いを感じた。

「名乗らなくても分かるでしょ?(笑) ところでさ、一体何があったの?」

少し強い口調でサイを問い詰める。

『ん? 別に何もないよ?』

「何もないならメールも電話も繋がるでしょ!?」

『何もないから、何もないんだよ。』

サイは私の質問を微妙にはぐらかす。
私は、それ以上サイを問い詰めるのを止めた。
こういう時のサイは、絶対に答えないからだ。

『…まぁ、何もないなら切るよ?』

それが仕方ないのは分かっている。
でも切りたくない私は、間をとってからサイに「じゃあね。」と言った。

…何もなくて良かった。

それが、私が一番最後に思った事だった。



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