彩は悌次郎に心を奪われた。あの日のお礼をしたいと思った彩は、手作りの悌次郎の為に拭沙を作った。悌次郎の事を思いながら…、丹精込めて…。2日後、彩は悌次郎に拭沙を渡しに日新館を訪れた。井戸水で顔を洗っている悌次郎を彩は見つけた。顔を洗っている悌次郎にそっと近付いた。「はい…どうぞ」顔を上げた悌次郎に彩は拭沙を手渡した。いきなりの出来事だったので本人は驚いている。「この前の…確か、彩さんだったか。足は大丈夫か?」「あ、あの時は…ありがとうございますっ!そ、そんでお礼に…このハ、ハンカチ…あっ、じゃなかった、拭沙…作ったんです。下手ですけど…」「わざわざ作ってくれたのか?」悌次郎が拭沙に目をやった。縫い目が少し曲がっている。彩は無器用なのだ。「本当、あたしこういうの苦手でっ…」「ありがとう、大事に使うよ。」悌次郎は微笑んだ。 (続編に続く)