ワイズはニヤリと笑って、
「この女の子は国の宝物を盗んだみたいでな。まあ、いわゆる王宮指定の賞金首という訳さ。だからこんなに高値がついているんだよ」
と、得意げに話た。
「へえ…凄いですね…」
「凄いと云えば凄いがな。ただ、彼女は女の子とはいえ立派な犯罪者だ。そこの所は履き違えるなよ」
「わかってます」
ザックは神妙な面もちで頷いた。
「さて、どうする?この女の子を追うかい?」
「いえ…額が高すぎるし、どこにいるのか見当がつかないから今は止めておきます。最初は軽い仕事の方がいいかな…と」
「軽い仕事か…」
ザックは小さく首を捻って、カウンターの引き出しを覗き込んだ。
「お前さん、出身はどこだ?」
「ポナミ村ですけど…」
「農家だったのか?」
「はい」
「なら、うってつけの仕事があるぞ」
「は…?」
ワイズから一枚の紙を渡されて、ザックは訝しげな表情でそこに書いてある内容を読んだ。
「農作業…?」
「ああ。昨日付で依頼された仕事だ。エリム村の農家の手伝いだよ」
「…はあ…」
「依頼料は二週間住み込みで働いて百五十ガリオンだ。どうだ?軽いだろ?」
「…」
ワイズはあまり乗り気でなさそうなザックを見て、さも残念そうな顔でため息を吐いた。
「実はこの農家の主人が腰をやってしまったらしくてな、しばらくは動けないみたいなのだよ」