チンゲンサイ。<28>

麻呂  2010-02-02投稿
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『オヤジ‥‥俺、もう限界‥走れねぇよ‥‥‥。』



『ユウ!!弱音を吐くな!!

父さんの“握りっぺ攻撃”には強い破壊力がある。

家を出て来る時に食ったカレーの中に、ニンニクをうんと入れてもらったからな。』



アリイン中毒の俺にとって、ニンニクは大好物であった。



そのニンニクを食った後の屁の臭いは格別だ。



恐らく、俺の通常の屁の臭いよりも、数十倍はキツかっただろう。



『急げ!!ユウ!!』



もがき苦しんでいるリーダー格の男が立ち上がる前に、



早く、4階にたどり着かなければ。





『ユウ!!目の前はボーリング場だ!!
ボーリング場の中に逃げ込むぞ!!』



『うん!!』



そこは、まさに別世界に見えた。



目前に見えるボーリング場は、



まるで、砂漠を放浪中の旅人が、



やっと見つけたオアシス同様、



俺とユウには輝いて見えた。



30レーンあるうちの、わずか5レーンほどしか使用されていないのは、



今日が平日だという理由からか。



『待てや!!このヤロー!!』



リーダー格の男が、更に距離を縮め、俺とユウに近付き、



ボーリング場の中へ入って来ると、



後続の4人も、それに続く。



『バカめ!!

自分達からボーリング場の中へ逃げ込むとは!!

もはや、テメェらは袋のネズミ!!

俺様の手の内よ!!
ガハハハハッッ!!』



背後に響き渡る、リーダー格の男の声におびえている暇は無い。



体力を消耗しきった俺達にとっては、



なるべく人の集まる場所へ逃げ込む必要があったのだ。



『だ、誰か助けてくださいッッ!!

俺達、チンピラどもに絡まれているんです!!』



とりあえず最初に目があった若いカップルに、そう告げたのだが、



目を血走らせていた俺達の方が、



若いカップルにとっては怪しい人物に映ったのだろう。



『何だよいきなり!!

ちょっと、ここのスタッフの人いる!?
変なオッサンと兄ちゃんがゲームの邪魔するんですけど!!』



思わぬ客からの呼び声に、スタッフの一人が気が付いた。



『オヤジ!!ヤバいよ!!

スタッフのヤツ、俺らの方見てるって!!』

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