『好きだよ』
君のその告白は奇跡に近かった
今ならそう思える
だったら君を抱きしめていれば良かった
あの時僕は何よりも自由を選んだ
好きか嫌いかと言えば君の事は好きだったけど
それは恋でもなく友達としてだった
『彼女』が欲しいと思わない事はなかったけど
『彼女』という存在が重かった
一人でも楽しめたし男といる方が楽しかった
もちろん君といるのも楽しかった
だけど愛ではなかった
そう確信したから君を選ばなかった
『気にしないで』と笑う君に『ごめんね』しか言えなかった
最後まで明るく振る舞ってくれた君
そしてそれから君とは疎遠になった
そうして離れてしまえば何となく心が晴れなくて君を思い出す時間は増えた
君からの連絡はなくなり
僕からも何も出来ずにただ季節は過ぎた
君は今何しているだろうか
あの時の傷は癒えただろうか
まだ君も一人でいるだろうか
君に会ってみたい
そう思った時には気付いていた
僕は君を愛し始めている
あれから一年近く経ち君に会える時が来た
良く集まった仲間との飲み会に君の顔があった
目が合った瞬間に胸は高鳴った
ぎこちなく笑いかける君が懐かしかった
少し痩せただろうか
髪を切ったんだね
長いストレートだった君も良かったけど短い髪の君も素敵だよ
『久しぶり』
君の声をやっと聞く事が出来た
やっぱり良い声だ
『元気だった?』
僕らしくなく緊張して君に何を言えばいいのか分からなくなった
運命の再会
そう思えたのも一瞬で
君の左手の指輪を見逃さなかった
君は来年には結婚をするらしい
周りは君に質問攻めだった
『彼氏は何歳?』
『どんな仕事してる人?』
『出会いは?』
『プロポーズの言葉は?』
照れ臭そうに答える君を見ている事に堪えられなくなった僕はその場から離れた
そんな僕を横目に君は少し寂しそうな顔をした
そんな目をしないでよ
勝手に盛り上がった自分が惨めになる