――サイから連絡が来なくなって1週間が経とうとしていた。
そして今日、私は就職の内定が来たので、なんとしてもサイに伝えたかった。
だが、その事でサイの実家に電話をかけるのは気が引け、どうしようかと悩んでいたところであった。
その時…。
Prrrrr...
携帯の着信音が鳴った。
「もしもし?」
私は慌てて電話に出た。
ややつっかえ気味になったが、気にしてはいられなかった。
『あ、登録してたんだ。』
サイは私が出るとは思っていなかったかのような反応をした。
「するに決まってんでしょ。」
苦笑いを返し、どうしたの?、と尋ねた。
『俺が居なくて寂しかったんだろ?』
意地悪なサイの声が響く。
「サイこそ私が居なくて寂しかったんでしょ?」
意地悪を返す私。
『またまた〜そんな事言っ「ほら〜。本当の事言いなさ『寂しかったんだ「優しいお姉さんが聞いてあげるから。」
台詞に台詞を被せ、何を言ってるのか次第に分からなくなってきた。
『…ふぅ。』
サイのため息が、やたらと大きく聞こえる。
「何よぉ。」
『卒業式って何日?』
突然の質問に私の思考回路が一時停止する。
「…3月1日、月曜日。」
『んじゃあ、俺が行ってやんねぇとな。』
「いやいや、無理でしょ。」
サイの仕事があることくらい、私にだって分かる。
『学年で何人いるの?』
「280人くらい…かな?」
『全員に花束一本ずつ持っていくか。』
「いや、いらないよ。」
見ず知らずの人から渡された花束を喜んで受け取る人は何人いるのだろう。
もちろん、そういう思いもあった。
だが、私の頭には別の想いがあった。
――サイからのプレゼントを他の人に渡したくない――
人並み以上に独占欲の強い私にとって、それは我慢出来ない行為であった。
もちろん、サイが本気ではないのも分かっている。
でも、やっぱり私は許せないのだ。
例え悪意がなくても、他の人―とりわけ女子―にされるのは嫌だった。
結局この話題はうやむやのまま終わった。