「姫様!」
その声でトーコは大木の穴から出たことに気付いた。
トーコは辺りを見渡した。
そこには綺麗な町並みが広がっていた。
市場のようなところで人々は美女に向かって次々に
「姫様!!」
と声をあげていた。
トーコはこの美女がここでは姫様だと認識した。
そしてトーコは握りしめていた手をぐいっとひっぱって美女を振り向かせた。
「トーコ。
大丈夫。
ここは私の国よ。」
トーコは
「国?」
と頭を悩ませた。
トーコの世界にはそんな言葉はなかったのだ。
すると姫様と呼ばれる美女は答えた。
「トーコのいた世界とは違うのよ。
時間も世界もね。
トーコのいたところではあの大木が世界と時空を渡るきっかけ。
そして渡れるのは決められた人だけ。
トーコ。
あなたは特別なのよ。」
特別…。
トーコは特別と言う言葉を心の中で繰り返した。
そして母の言葉を繰り返し考えた。
母も同じことを言っていた。
トーコは少しだけ自分が特別だと実感し始めた。