石川と背中合わせに次々とスパイカー陣へトスを送った。あの練習試合のすぐ後、監督が倒れて入院する騒ぎがあり、しばらく石黒コーチが監督代行する事になった。
和田の目の裏に火花を散らして瀬戸がすぐ脇に着地した。目で問いかけてくるのも構わず、すぐ次の選手へ手を叩いて促す。不満気な瀬戸になど構ってられない。背後の石川は、もう気付いているはずだった。
練習後、石黒と久慈に呼ばれて練習場の隅にある事務室へ入った。石黒の後ろに、腕を組む久慈がいてまるで取り調べ室のようだ。
「疲れてるのに、悪いな…瀬戸の事、和田に頼んでたと思うけど、最近はどうだ?」「…すみません。後で勝手に八嶋に言い含めて任せました。休みの日に街中を連れ回したりしたそうです」
二人はなぜか大ウケに笑った。瀬戸と八嶋の組み合わせが面白かったらしい。
「凸凹コンビだな」
「ま、結局瀬戸はなんの問題もなかったですね」「そうだな…それより」石黒が、こちらをにらんだ。
「前から問題があるのはお前の方だ!」
ロッカールームへ戻ると、ベンチで瀬戸がボールをお手玉に遊んでいた。
「なんの話だったんですか?」
告白の後でさえ、話しかけてこれる瀬戸のその度胸が和田には羨ましい。
「レギュラーとれなかったら首だってさ」 「…はいっ?」
瀬戸が上げた大声に、残っていた同僚達まで集まってきた。