やがて館内に入り、入り口付近で受付を済ませ、指定された席に座る。
周囲を見渡し、顔見知りを探したが、親しい知人は見当たらず諦め、先ほど受付で配布されたキャンパス案内に五分ほど目を通してから鞄にしまった。
開会式の十五分前に僕の隣に女性が座った。僕はそれを横目で見ると、美咲がいて僕は驚いた。
彼女とは昔、交際していて、僕も彼女も初めての恋人で、特別彼女には強い思い入れがある。
僕たちは中学校の終わりに交際し始め、高校が別々になり、高校二年の冬、そろそろ受験勉強も始まるという事で会う暇がないといって適当に理由を付けて、僕から一方的に別れを切り出したのだ。
そんな理由で彼女が納得するはずもなかったし、もちろんそんな理由で別れたのではなかった。
しかし弁解するようだが、僕は彼女の気の利く性格も、女性的な性格も大好きで、もっとも彼女は僕にとても尽くしてくれた。
寒い冬にはマフラーを編んでくれたし、僕が風邪をひくなり、いつも治療法やら風邪に効く食の知識などをわざわざ電話口で教えてくれた。
これほど行き届いた学生も滅多にいないだろう。かつて僕は彼女と一生を共にしたいとさえ思っていた。