しかし僕が驚愕すべき点は他にあった。
それは彼女がこの大学になぜ入学したのかという事である。
この大学もこの地域の私立大の中では優れてはいたけれど、彼女の学力相応の大学とまではいかない。
僕の中では、彼女が東西トップに君臨するような大学に合格していても全くもってあり得る事態で、むしろこの事態こそ訝しく、由々しき事態である。
もしも彼女、または彼女の両親の地元志向という思念が強かったならば、近くには学力水準の高い国立大があったわけで、金銭的な面でもそっちの方が融通がきく訳だし、ますます謎は深まる。
まさか僕を追ってきたのだろうか。
いやそんなはずはない。僕は彼女と別れた後、彼女からの手紙や電話一切を、無視し続けてきたのだから。
そんなやつを追うのは、時代遅れの娼婦または余程腹を空かせた犬猫くらいだ。
それに彼女はそんな一時の感情で人生を棒に振るほど間抜けではないだろう。
僕があれこれと脳の隅々まで思い巡らせている内に、彼女の方からこちらに向かって話し掛けてきた。