「あらお久しぶりね。まさかこんな所で再会できるなんて私たちって運命なのかしら。」
美咲は厭味たらしく僕に言った。
「…ああそうだね。まさか君がこの大学に来るとは思わなかったよ。僕が知る限り、君はとても知能が高く、優秀だからね。」
僕は少しの間、閉口してから返事をした。
「あなたが思うほど悪い大学でもないわ。キャンパスは緑に覆われていて、心地よいくらいよ。むしろ好意的だわ。それに…」
「それに?」
「半年前に望未(のぞみ)が死んだのよ。自殺よ。ロープで操り人形みたくぶら下がってたんですって。」
「えっ…」
僕は驚いて声を失った。
彼女は話を続けて、
「それからというもの何だか私の心と体はバラバラなのよ。あなたと話している今現在も、それは続いているのよ。そんな状態でのこのこと受験勉強なんてできると思う?」
彼女は憤りを抑え切れずにパイプ椅子から立ち上がると、椅子は十センチばかし後退りした。
椅子が体育館のウレタン塗装の床に擦れ、歯ぎしりするような音が広がったが、続々と増殖する人々の騒音に溶けていった。
こんなに昂奮した彼女を見るのは初めてで、僕は気圧され沈黙が続いた。