「って、ブラウンさん、腰は大丈夫なんですか!?」
と、思わず大きな声を出してしまった。
「腰?いや、何ともないよ」
ブラウンは不思議そうな表情で、首を横に振った。
「だ…騙された…」
ザックはがっくりと肩を落とした。
「騙された?」
「いえ…気にしないで下さい」
「そうかね?まあいいか…。それより、君が農家の出身と聞いて安心したよ。一から教えなければならないかと心配していたものでね」
ブラウンは小さく微笑んで、運ばれてきたコーヒーを一口飲んだ。
「いえ、農家出身でもまだまだ若輩者ですから。全て完璧にこなせる訳ではないんです」
ザックはそう言って、首を横に振った。
「そう?それでも私たちにとっては有り難いわ。何せ貴重な男手だし」
エミリーはにっこりと微笑んで、ブラウンの隣に座った。
「あの…失礼ですけど、子供はいらっしゃらないんですか?」
「娘が二人います。一人は嫁に行って、もう一人は家に帰ってきたり出て行ったりを繰り返していますね」
「そうなんですか…それではあの広い畑を耕すのは大変ですよね」
ザックはこの家の前にあった畑を思い浮かべながら、小さく頷いた。
「畑をご覧になったのですか?」
「はい。村の人に聞いて、先に見させて頂きました。あと…こちらの家と、納屋と、隣にあった小屋と…」
「!」
隣の小屋、という言葉を聞いた瞬間、二人は一斉に顔色を変えた。