「どうしたんですか?」
ザックは怪訝そうな表情で、二人を見た。
「いや、何でもないよ」
「ええ、何でもないのよ」
二人は慌てて笑顔を作りながら、首を横に振った。
「…実はあの小屋で私の父親が死んでいるのでね…」
「あ、そうだったんですか」
ザックは先ほどの表情の意味が分かって、納得したように頷いた。
「すいません、何か嫌な事を聞いてしまったみたいで…」
「ああ、いやいや、いいんだよ。もう何年も前の話だから」
「それより、ザック君はどうして賞金稼ぎになったの?」
エミリーは少々強引に話を逸らした。
「え…と、憧れ、ですかね」
「憧れ?」
「小さい頃、賞金稼ぎの女性に短期間でしたけど剣術を教えてもらったんですよ。それで、憧れて…」
「へえー!憧れの女性を追いかけて?あんまり積極的なタイプじゃないかなと思ったけど、中々やるじゃない!」
エミリーは目を輝かせて、何度も頷いた。
「いえ、その…追いかけて、っていうものじゃなくて…」
「いいじゃない!頑張って立派な賞金稼ぎになりなさいよ!応援してるからね!女性の後ろ姿をいつまでも追い掛け続ける孤高の賞金稼ぎ…いい、いいわ!」
「あ…あの…」
「ザック君、そっとしておいてあげてくれ」
ブラウンは諦めたような顔で首を横に振った。
「妻は恋愛話には目がなくてね。妄想を膨らませて楽しんでいるだけだから。明日には元に戻っているよ」
「は、はあ…」