《もうすぐ駅に着くよ。》
あと2駅というところで、私はサイにメールをした。
《迎えに行こうか?》
《別に大丈夫だよ!?》
《だって寒いじゃん。》
《じゃあ…お願いします。》
サイの理由は寒いからになっていたけど、本当は早く私に会いたかったんじゃないかって思う。
だって私は電車の中にいたし、外を歩けば身体が温まるからだ。
それに日中は、騒ぐほど寒い訳ではない。
「おっす。」
私が助手席のドアを開けた瞬間に中から声がかけられる。
「はい、チョコ。」
私は車を運転しているサイにチョコを見せた。
「ちょっと待てや〜。俺今運転中だぞ。」
「だって、持ってるの怖いんだもん。」
実はチョコの他に、誕生日プレゼントもあった。
本当は3日前だが、事情が事情なので、渡せなかった。
「俺が持っていたらもっと怖いべや。」
笑いながら私にそう言うサイ。
この笑顔を見るのは、約1ヶ月ぶりだった。
「今日そんなに寒い?」
「俺の家は寒いのや。」
今は引越しの真っ最中らしく、ストーブやコタツは持って行ってしまったらしい。
部屋の中を見ると、布団が居間に敷いてあった。
…それも、毛布とコタツ布団が1枚ずつ。
――これじゃあ寒いはずだよ。
こっそりとため息をつき、私はサイが一足先に入っている布団に潜り込んだ。
……それからあとは、あっという間だった。
久しぶりに抱きしめあい、久しぶりにキスをした。
息をつく暇もないくらい、長くて深いキスだった。
お互いを抱きしめて身体を温めあった。
そしてやっぱり最後に思ったのは、この人と一生一緒にいたい、だった。
……そして、帰り際。
サイは私に‘ありがとう’って言ってくれた。