「こっちに来なさい」
少女はザックの腕を掴んで、家の外に出ようとした。
「ち、ちょっと待って下さい!何が何だかさっぱりわからないですよ!」
「いいから来るの!」
それから二人は腕の引っ張り合いを始めた。
「リリア!大丈夫か!?」
その時、ダリルとエナンが血相を変えて家の中に入ってきた。
「ダリル、エナン!彼を小屋の中へ連れて行って!」
「よしきた!」
ダリルは大きく頷いて、ザックを後ろから羽交い締めにした。
「うわ、何!?何!?」
ザックは混乱してじたばたと暴れ始めた。
「大人しくしろ!」
ダリルは後ろから延髄に手刀を浴びせた。
ザックは気絶して、がっくりと頭を垂れた。
「おい、どうした?何かあったのか?」
丁度その時、畑の様子を見に行っていたブラウンが騒ぎを聞きつけて家に戻ってきた。
「お父さん、彼を尋問するから。小屋を使うわね」
リリアと呼ばれた少女は怒ったような表情で、外に出て行った。
「え…あ…」
ブラウンはその騒ぎの原因であるザックに目を向けて、顔を青くした。
「勝手に入ってしまって申し訳ありませんでした」
リリア、ダリルに続いて外に出て行こうとしたエナンは小さく頭を下げた。
「それでは」
エナンは銀縁眼鏡を光らせてもう一度頭を下げると、素早く外に出て行った。