と あるレストランが
そこで繰り広げられる
日常的な他愛ない出来事や、思わず目や耳を疑う様な様々な人間模様を、そっと僕らに語ってくれた。
時に愚痴っぽく、時に熱く、時に微笑ましく。
僕はレストランの話を聞くのが好きだ。そこに働く人と、そこに集まるお客の人間ドラマ。
さて、今日はどんな話が聞けるかな♪
『いらっしゃいませ!』
エピソード
〜開いた口が塞がらない〜
深夜1時過ぎ。遅く仕事が終った二十代後半の男は一人、耐え難い空腹との戦いに破れ、深夜であろうと、明日の仕事が早かろとガッツリ食べたい、食べてやる!と決めていた。
車に乗り込み、深夜のドライブに出掛け30分程流すと、しばらくぶりとなるお目当てのステーキハウスに着いた。
空腹感という悪魔を振り払うかの如く、そのウエスタン風のドアを開けた。瞬間、鼻先をかすめる 香ばしくジューシーな肉の焼ける匂いと、溢れこぼれる肉汁の音、オト、おと。薄暗い店内に漂うタバコの煙りとアルコール、数名の客の話し声と笑い声が混ざり合って、その場の空気を作っていた。
その空気の懐かしさに、少しの安堵感を持ち、ホッとした。そして期待とともに一瞬忘れた空腹感が再び暴れ出した。
男は席に着き、メニューも見ずにオーダーを頼んだ。まるでオーストラリアの大地に、地球の臍と呼ばれるエアーズロックの様な、堂々として肉汁溢れる、その自慢のステーキセットを。
とその次の瞬間だ!
『!!!』と怒鳴られた。
男は自分の耳を疑うという言葉の意味を、身を持って体験した、してしまった。させられたのだった!
しばらくの間、きっと2、3秒の実際時間が5分位に感じられた程、思考が止まった。いったい何が起きたのか?!この人は何を言ってるのか理解できず。余りに衝撃が強すぎて、空腹感も怒りも彼方に吹っ飛ばされた。そして、どうしてよいかわからなくなり、その場を去るしかできなかった。なんで?そんな事を言われなきゃならないのか、全く納得できず、呆然としながら帰路につき、途中にあった牛丼屋でとりあえず食事を済ませた。お腹が落ち着くと、余りな意味不明で理不尽な対応に、じわりじわりと怒りが込み上げてきた。もう一度戻り、怒鳴り付けようと思いハンドルを手にとった。が、次の瞬間、あうゆうイカレタ奴に何言っても通じない、余計嫌な思いをすると考えやめた。