チンゲンサイ。<29>

麻呂  2010-02-16投稿
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今の状況は、確実に俺達にとって不利であった。



『ユウ!!走れ!!
ボーリング場から出るんだ!!

映画館に向かうぞ!!』



『マ‥マジで?!』


俺は透かさず、ボーリングの球を2つ手に取り、


走りながら、その瞬間を待った。



『逃げても無駄だと言っているだろ―がッッ!!

待ちやがれッッ!!』



リーダー格の男が再び距離を縮め、



ドタドタと、俺とタイを張るほど短い足をバタつかせて近付いて来るのを――



『今だ!!

食らえっ魔球!!

“鼻くそボール”だっっ!!』



俺の魔球は、みるみるうちに、狙った獲物めがけて走り出す。



『うわっっ!!

何だこの球は!!

回転しやがって!!
まるで生き物みてぇだ!!』



リーダー格の男が、何やらブツブツ言いながら、


俺の魔球をかわそうとしたその時だ――


『うっ‥うわあぁぁぁぁっっ!!』



球を蹴り上げようと、男が勢いよく足を振り上げた瞬間に、


俺の魔球は、見事に作戦通りの動きを見せた。



ギュルンと男の足元で向きを変えた球は、その短い足をかわし、



勢い余って、男はその場に大の字にひっくり返ってしまったのだ。



『オヤジ‥‥すげぇよ‥‥‥。』



『ユウ!!

俺の鼻くそは色、粘着度と、共に天下一品を誇る事の出来るものだ!!

球に貼り付ける事で、複雑な回転をかける事が出来る!!』


今は、ユウに詳しい説明をしている時間は無い。



『とどめだっっ!!
“鼻くそボールしかも鼻毛付き!!”』


俺は、更に後続の男達に向かって、もう1つの魔球を放り込んだ。



『ぐっっ‥うおぉぉぉぉ〜〜〜っっ!!
きっ‥汚ねェ〜〜〜っっ!!』



男達の野太い悲鳴が辺りに響き渡り、



俺達は、ボーリング場スタッフの可愛い女のコに一礼をしながら、その場を立ち去った。

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