今の状況は、確実に俺達にとって不利であった。
『ユウ!!走れ!!
ボーリング場から出るんだ!!
映画館に向かうぞ!!』
『マ‥マジで?!』
俺は透かさず、ボーリングの球を2つ手に取り、
走りながら、その瞬間を待った。
『逃げても無駄だと言っているだろ―がッッ!!
待ちやがれッッ!!』
リーダー格の男が再び距離を縮め、
ドタドタと、俺とタイを張るほど短い足をバタつかせて近付いて来るのを――
『今だ!!
食らえっ魔球!!
“鼻くそボール”だっっ!!』
俺の魔球は、みるみるうちに、狙った獲物めがけて走り出す。
『うわっっ!!
何だこの球は!!
回転しやがって!!
まるで生き物みてぇだ!!』
リーダー格の男が、何やらブツブツ言いながら、
俺の魔球をかわそうとしたその時だ――
『うっ‥うわあぁぁぁぁっっ!!』
球を蹴り上げようと、男が勢いよく足を振り上げた瞬間に、
俺の魔球は、見事に作戦通りの動きを見せた。
ギュルンと男の足元で向きを変えた球は、その短い足をかわし、
勢い余って、男はその場に大の字にひっくり返ってしまったのだ。
『オヤジ‥‥すげぇよ‥‥‥。』
『ユウ!!
俺の鼻くそは色、粘着度と、共に天下一品を誇る事の出来るものだ!!
球に貼り付ける事で、複雑な回転をかける事が出来る!!』
今は、ユウに詳しい説明をしている時間は無い。
『とどめだっっ!!
“鼻くそボールしかも鼻毛付き!!”』
俺は、更に後続の男達に向かって、もう1つの魔球を放り込んだ。
『ぐっっ‥うおぉぉぉぉ〜〜〜っっ!!
きっ‥汚ねェ〜〜〜っっ!!』
男達の野太い悲鳴が辺りに響き渡り、
俺達は、ボーリング場スタッフの可愛い女のコに一礼をしながら、その場を立ち去った。