「興ざめだな、お前は戦乱を終わらせるよりも、その刀の方が大事なのか?」
核心をついたその言葉に、半次郎は目を大きく見開いた。
乱世を終らせるだけの力を得るためにノアの教えを必要としたが、いざ形見刀とそれが天秤にかけられると、無意識に前者をえらんでいた。
刀を使って防御していれば、少しは楽にノアの攻撃を防げ、反撃の一つもできたのやもしれぬのに。
刀を見つめる半次郎は、そこに宿る魂が泣いているを感じていた。
そして彼は気付く。
後藤半次郎の意志を継ぐため、願いをかなえるためと戦場を駆け抜けたが、それはただ己の責務から逃げていただけではないのかと。
戦乱の終結を己の責務ととらえるかどうかでは、その可否にかかる責任の大きさに雲泥の差がある。
誰かの為に頑張ったといえば、失敗に終わってもそれが言い訳となり、逃げ道になるのだから。
半次郎は自分が何をなさねばならぬのか、改めて考え始めた。
その脳裏に過ぎったのは乱世の惨状であり、輝きを失った子供等の瞳だった。
やはり戦乱の世は終わらせぬばならない、それは後藤半次郎の遺志ではなく、自らの意志が導き出した答えだった。
ノアは高々と剣を振り上げた。
戦闘中に相手から視線を反らし、うつむいたままでいる半次郎に見切りをつけた彼女は、本気の一撃をはなとうとしていた。
それで命を落とすようなら、これから先に半次郎が進む荊の道を踏破することは、到底できぬだろう。
ならばここで終わらせてやるのが彼の為だと、彼女は考えた。
そして、渾身の一撃が半次郎に襲い掛かる。