「ああ、ガトー。この三人どうやらイルザリアンの生徒らしい」
「イルザリアンの?なんでこんな所にいるんだよ?」
「今それを聞いていた所だ」
するとナッシュと呼ばれた男はリュート達の方へ歩み寄り、目深に被っていたフードを取ってその素顔を見せた。
まだ二十代前半の若い男だ。
「さて。こんな夜にこんな場所で、はたして怪しいのは俺達の方なのか君達の方なのか、これから一緒に学園長の所へ行って判断してもらってもいいんだぞ」
その言葉を聞いて、リュート達はようやく自分たちの立場を理解し、安堵した。
しかし安心したのも束の間、学園長と聞いてすぐに事の重大さに気付いた。
「まぁいい、話は学園長にたっぷり聞いてもらう。ただで済むと思うなよ」
「ちょ…ちょっと待って。学園長の所へ連れて行くの僕だけにしてくれますか。この二人は僕に言われてきただけで…」
「リュート」
事実そうなのだが、もちろん聞き入れてくれる訳もなく。
「だめだ、三人一緒だ。」
「そんな…」
そして三人は言われるがまま、男2人に連れられ来た道を戻ることになった。
その道中、責任を感じてうなだれているリュートを見てサヤが声をかけた時の事だった。
「リュート気にしなくていいよ」
「サヤ」
「怖かったけど、でも少しワクワクしてたんだ。こんな遠くまで歩いたの凄く久しぶりだし。へへ」
そう言って無邪気な笑顔を見せるサヤに対して、リュートも笑顔でそれに応えたが
自分の無力さに無性に悲しくなった。
「なぁ、サヤ」
「ん?」
「あのさ、あの時俺が言った事覚えてるか?サヤの家で」
「あー、うん。なんだっけ」
「オレ…」
―と言いかけたその時
ふとサヤの方に目をやると、黒い手がサヤの肩の上に置かれていたのに気付いた。
「サヤ?」
それは一瞬の出来事だった。