呼び人 16

春歌  2010-02-20投稿
閲覧数[279] 良い投票[0] 悪い投票[0]

男前の不機嫌は、凡人の不機嫌より勝るものがある。
目つきが悪いのだ。

顔が整っているせいか、無駄に迫力がある。
普段の冬夜はどちらかといえば笑わないことの方が多いため、さして珍しいことではないのだが…その中でも怒りというよりは疲労が浮かぶ時、彼はたまに歳相応でない「その」顔をする。
前をじっと見つめ、何処ともわからない現実をただ静かに眺めているのだ。

そんな彼を見ると心は落ち着かなくなった。
自分が子供に戻してやらなくては、と、そんなおかしな気になるのだ。
まぁ今はそんな彼ではないので安心だ。どちらかと言えば、むしろ子供らしさがあるーーー今の彼なら喧嘩が強いという肩書があるのだからそこらのチンピラにでも混じればしっくりくるかもしれない。
「じゃあどうして怒ってるわけ」
「……あいつだよ…前に話しただろ?あのガキ」
「ガキ?」
「家に住み着いてる変なヤツ。朝から遊べ遊べって…」
「あー…あぁ!あの子ね。へぇ、で、遊んであげたの?」
「『遊ばされた』の!ったく…朝からマジやってらんねー…伊織は来るし…眠いしよぉ」
そう言って欠伸を噛み殺す冬夜。
やっぱりいおりん来たんじゃん、と心が言うとツンと顔を逸らして冬夜は「知らね」と投げやりに言った。
その横顔が怒りよりも照れに見えて、心は穏やかに微笑んだ。
「ところで、そろそろ移動しない?理科、実験でしょ?」



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 春歌 」さんの小説

もっと見る

ファンタジーの新着小説

もっと見る

[PR]
人気雑誌多数掲載
脂肪溶解クリーム


▲ページトップ