自分は農家の一人息子だ。その家を継ぐのは当然の事。そう思っていた。
｢でもね、ザック。男の子なら何かしらの冒険をしてみるものよ｣
彼女は笑顔でそう語りかけた。
｢冒険をしてから農家を継いでも、遅くはないはずよ｣
冒険？
それは何？
｢何かを探しに行くのでもいいし、悪い奴をやっつけるのでもいい｣
とにかく、広い世界を見なさい。
｢広い世界…｣
僕は一度も放った事の無い言葉を呟いて、彼女を見上げた。
彼女は微笑みながら、小さく頷いた。
｢ん…｣
ザックはうっすらと目を開けた。
｢起きたみたいだぞ｣
｢…！｣
男の声を聞いて、ザックは飛び起きた。
｢え、あれ、あれ？｣
混乱しているのか、彼は何度も周りを見渡した。
そこにはエナン、ダリル、リリアの三人が椅子に座ってザックを見ていた。
その表情は厳しい。
｢おはよう、ザック･アルバート。寝起きはどうですか？｣
｢寝起き…？いや、違う違う！｣
ザックは大きく首を横に振って、ダリルたちを睨んだ。
｢どうしてあんな事をするんだ！？僕はここに手伝いで来ているだけなんだぞ！｣
｢それに関しては礼を言うわ。お陰で仕事が早く済んだみたいだし｣
リリアはそう言って、頭を下げた。
[425] 
[0] 
[0]
