その夜の深夜3時半過ぎ。
この部屋に駆け寄ってくる足音に気付いた琴音が壁に立てかけていた刀「雛菊」を手に取り、裕也に声をかけようとしたとき、すでに裕也は目を覚ましていた。
琴音
「さすがですね」
琴音がそう言うと裕也は無言のままベッドを出るとテーブルの上に置いてあったシルバーダガーを取り、ドアに近づいた。
里山
「鷹成くん!」
この声は……里山か?
しかし声の調子がどうもおかしい。
裕也
「どうしたんだ?」
里山
「姫野さんは来てないか?」
裕也
「いや、来ていないが……。
姫乃がどうした?」
里山
「それが……どこにも見当たらないんだ!」
琴音
「えっ!?」
裕也が琴音に目配せした。
琴音がドアに手をかけ、ゆっくりとドアを開いた。
そこには不安な表情をした里山が立っていた。
そのときには、僕たちも自分の刀を持ってドアの近くに集まっていた。
達也
「姫野さんがいないって、どういうこと?」
里山
「いや……それがそろそろ見回りの交代時間だったから食堂にいる姫野さんを呼びに行ったんだ。
けど、食堂に行ってみると姫野さんがいなくなっていた」
裕也
「館内は、探したのか?」
里山
「ああ、部屋も蛻の殻だった。
今、他の場所は、井隅さんたちが捜しているはずだ」
低く唸ると裕也は、ホルスターを装着すると僕たちの前に立った。
裕也
「俺達も捜索に参加するぞ。
行くぞ、みんな」
里山
「じゃあ、まず食堂に行こう。
井隅さんたちがいるかもしれない」
里山がそう言うと僕たちは、食堂へと向かった。
食堂に着くと奈々さんたちがいた。
結局、館内に姫野の姿はなく、みんなの表情にも不安と苛立ちが浮かんでいた。
奈々
「姫野……一体、どこへ行ったの……」
裕也
「奈々、どうするんだ?
もう一度、みんなで手分けして探すか?」
一真
「待てよ……」
いきなり緋山が立ち上がった。
善孝
「どうした?緋山」
一真
「だいたい、おかしいじゃないか、井隅さん」
奈々
「……なにが?」
奈々さんがそう問いかけると緋山は、こう言った。