茉莉子が、病院に来てからも、淳の容態に、特に変化は無く、時間だけが、刻々と過ぎて行った―\r
茉莉子も、私の隣のベンチに腰掛けたまま、殆んど、口を開かなかった。
「ねぇ、香里?」
病院に到着してから二時間程経った頃、突然、茉莉子は、私の肩を叩いた。
「んっ・・・?どうしたの?」
「ここで待ってても、淳に変化も無いし、ちょっと外出ない?」
「でも・・・。」
「もし、何か有ったら、彼女に連絡して貰って、直ぐ、戻れば良いじゃん。隣に、ファミレスが有ったから、そこに行かない?」
「う・・・うん・・・。」
私は、素っ気ない生返事をした。
「良いじゃん、ちょっと香里に聞きたい事も有るし。淳が気になるのは、私も同じだけどね、ここに居ても、何も変わらないでしょ?」
「まぁ、それはそうだけど・・・。」
「じゃあ、行こ。あの・・・。七星さん、だよね?」
茉莉子は、自分からうつ向いている七星に声を掛けた。
「はい・・・。」
「私達、少し、隣のファミレスに行こうと思うの。だから、淳に何か変わった事が有ったら、香里の携帯に悪いけど連絡貰えないかな?」
「良いです・・・、けど・・・。」
「じゃあ、悪いけど、お願いね。香里、行こ!!」
茉莉子は、七星にそう言うと私の左腕を掴み、ベンチから立ち上がらせた。
「でも、でもね、茉莉子。」
「良いから。淳の彼女も良いって言ってんでしょ。香里も、くたびれちゃうよ、魂詰めて、ここに居ちゃ。」
それから、私と茉莉子は、病院を出て、真隣に有る、ファミリーレストランに入った。
「話って?淳の事?」
「まぁね。麗華の事も関係有るかな?」
「何、何の話なの?こんな時に。」
私は、麗華の話だと茉莉子から聞いた瞬間、何か獲体の知れない、胸騒ぎに襲われて居た。
「あのね、麗華の彼氏知ってるわよね?」
やはり、私の予測は、当たっている様だった―\r
「うん。麗華の彼氏がどうかしたの・・・?」
私の声は、きっと震えて居ただろう―\r
「香里さ、ほんとに、昔逢った事無い?その・・・、中川さんと。」
「前に一度、麗華に紹介されて、その時、初めて逢って。それ以来、逢って無いし、逢ったのは、その時だけだけど・・・。どうして?」
「ふぅ〜ん。そうなんだ。」
「何で、私に、そんな事いきなり聞くの?」
「麗華がね・・・。香里が私の事、避けてるって。その、前に中川さんに香里が逢ったって日から突然に。そう言って聞かなくて。」
私は、親友の前で、中川の名前を聞いて、冷静を装えるか、不安に駆られて居た―\r