子供人形たちはエルファを母親だと認識したのか…
目を輝かせて、両手を上げピョンピョンと飛び始めた。
「ミャミャー! ミャミャー!」
ミャミャとは、子供人形独特の幼児言葉でママと言う意味である。
子供人形たちの声…
子猫の鳴き声に近い高いトーンである。
「初メマシテ。私ガ、ママヨ!」
エルファ・ママは笑顔は、笑顔である。
「ミャミャー、ミャミャー!」
「可愛イ、可愛イ」
エルファ・ママは子供人形たちをしっかりと抱擁し始める。
マルセルが暗い表情で戻って来た。
「エルファ、人形部屋での準備が出来たわよ」
いつもなら…
いつもなら、エルファはニッコリと微笑んで礼を言う。
自分の身の回りをキチンとしてくれたり…
話し相手になってくれたりするマルセルに感謝するのだ。
だが今は、エルファの態度が変わった。
マルセルには目もくれず、子供人形たちに声をかける。
「ミンナァ、ママト、オ部屋ニ、行キマショウ!」
「ミャーイ!」
子供人形たちの元気な返事である。
「ミンナ、並ンデ、行進ヨォ!」
子供人形たちは1列縦隊に並んだ。
「ミャ、ミャ、ミャ…」
ママの手拍子に合わせて、元気良く行進して人形部屋へと入って行った。
手拍子をやめたエルファはマルセルの方に視線を向けた。
「食事ノ用意ハ?」
「今すぐ用意してもイイけど?」
「何ヲ、シテイル? スグニ、用意、シナサイ」
やけに、大きな態度にカチンと来たマルセルは思わず尋ねた。
「どうしたのエルファ?
何だか急に、冷たい態度になって」
エルファは何も言わず、ぷぃっと部屋の中に入って行った。
ドアをバターンと閉められた時は、マルセルは何だか疎外された気持ちになった。