「ミャミャー」
エルファ・ママの目を見て両手を広げる子供人形。
名前はルラ…
20体のなかで一番の泣き虫で甘えっ子である。
「私ノ可愛イ宝物。
ゴメンナサイ、寂シカッタ、デショウ?」
エルファは優しいママの表情でルラを受け取り、頬ずりした。
「ミャーァ」
初めてのママの温もりに接して、ルラの表情がほころんだ。
エルファはそのまま、部屋に戻ろうとした。
「待ちなさい!」
「?」
背後からマルセルに声をかけられて、エルファは足を止めた。
振り返ると、マルセルが緊張した表情で立ったままである。
「さっきから私は、アナタや子供たちの世話をしているのに何なの、その冷たい態度は? ありがとうとか、ゴメンナサイとか言えないの?」
「…」
エルファはクールな眼差しでマルセルを見つめる。
「子供たちがウチに来てから、急に横柄な態度を取るなんて! どっちが主なのかしら!?」
エルファはカッとなり、いきなり…
マルセルの頬にビンタを2、3発くらわせた。
マルセルは怯え、後退りし始める。
エルファは今までにない、厳しい表情を見せた。
「ヨク、聞キナサイ。
私ハ、気品溢レル、高級人形。子供タチ、優秀デ素晴ラシキ宝物。
下等ナ生キ物デアル、オ前ハ、今後モ、私ニ、忠誠ヲ、誓ワナケレバ、ナラナイ」
「馬鹿じゃないのアナタッ!? この家の主は、この私よ。忘れたのッ!?」
「今日カラハ、コノ私ガ、コノ屋敷ノ主。オ前ハ、私ノ、奴隷」
「エルファ…」
信じられないような威圧的な態度を取るエルファに、マルセルは呆然となった。
そのままルラを抱いたまま、エルファは部屋に戻り始めた。
「ミャミャー、オニャキャ(お腹)、チュイチャ(空いた)ー」
空腹のあまり、ルラィはメソメソ泣き出した。
「可愛イ、ルラ。美味シイ、御馳走、用意、シテルワョ」
エルファは、優しいママの笑顔で我が子をあやした。
ルラは暖かいお部屋で、ママからご馳走を食べさせてもらった。
ルラの場合は…
人間の母親の母乳を混ぜた肉シチュー煮を哺乳瓶に入れて飲ませるのだ。