烈しい火花とともに、ノアの剣が弾き返された。
頭上にかざした刀で防御した半次郎は、そこにはしった亀裂を目にし、己の甘さが招いた結果に自嘲していた。
そして、その刀を大上段に構えると、彼は凛とした瞳をノアにむけた。
「次の一撃で、終わりにしましょう」
これまでにノアが繰り出した攻撃は、全てが上段からのものだった。
それに真っ向から受けてたつ意思を、半次郎はしめしていた。
『……何かを悟ったか』
半次郎の瞳から迷いが消え去ったのを感じ取り、ノアは静かに微笑んだ。
そして彼女は、半次郎に呼応して上段に構えをとる。
上段同士の闘いにおいては、上背のある半次郎に分があった。
だがノアには、それを意に介さなくてもいいだけの、電光石火の剣技がある。
いつの間にか、ノアの気は半次郎の気に中和され、均衡がとれた状態になっていた。
だがそれは、半次郎の気がノアのそれに肩を並べたからではなく、純粋な剣の勝負を臨んだ彼女が、気を抑えた結果によるものだった。
戦闘開始時とは打って変わり、辺りは水をうったように静まり返っていた。
二人の耳にとどくのは、互いの微かな息遣いの音だけだった。
その呼吸が同調した刹那、ノアが軽やかに大地を蹴った。