俺とケンヂは、散歩の途中に小学校の運動会を見かけた。
小学校低学年くらいであろうか、ちょうどグランド一周の徒競走が始まろうとしていた。
「かわいいなー。俺たちもあんな時期あったよなー」
俺は言った。すると、隣のケンヂがこう言った。
「なあ。次のレース、誰が最初にゴールテープを切るか…ジュース代かけないか?」
スタート地点には4人の子供たちが、すでにスタートの合図を待ち構えている。
「うーん…左端にいる一番背の高い子かな」
俺は答えた。そして反対にケンヂに尋ねる。
「じゃケンヂは誰を予想する?右隣の、一番細い子か?」
「いや」
「じゃ、その隣の一番小さい子か?」
「それも違う」
「え?まさか右端の…一番太っちょの子にかけるんじゃ?」
「いや…フフフ」
ケンヂは不敵な笑みを浮かべた。それと同時に、スタートのピストルの音が鳴った。
ケンヂの予想がまだ決まらぬうちに、レースは始まってしまったのだ。
俺はとにもかくにも、レースの行方を注視した。
(つづく)