生まれ落ちた時
悲しみなんて背負って
いなかった。
勝手に刻んだ
十字の傷が
私の背中で疼いてる。
心の置場がないから
肉体から精神が
離れていく。
悲しい音は
雨垂れのように
水溜まりで
広がって消えた。
四肢を縛る鉄の鎖。
鉄の冷たさに
慣れていく皮膚感覚。
古びた教会の十字架に
巻き付いた植物。
罪に囚われて
いつの間にか
解けなくなった。
部屋中に乱雑した
数多の哲学書。
答えがまったく
見つからない。
肉体は時間をかけて
悲しみと共に
ゆっくり風化してゆく。