まず先頭を切ったのは、一番背の低い子供だった。なかなか、すばしっこそうだ。
次に隣の一番細い子供が追い上げてくる。スマートなフォーム。これは油断ならない。
すると最初のカーブを曲がったところで、本命の一番長身の子供が一気に巻き返す。速い速い!あっという間に先頭に立った。
「やった!いいぞ」
俺は思わずコブシを握り締めた。
俺が予想した長身の子供は、二位以下をぐんぐん引き離す。
思い通りの展開に、少し余裕の出来た俺は、後続の行方を追った。
二位・三位ともかなり差がつき、最下位の太った子供に至っては、トップの長身の子と倍近い差がすでに開いていた。
「勝負あったな」
そう言って俺は得意気にケンヂの方を振り返る。するとケンヂがいない。
――もう観念してジュース買いに行ったんだろ。
そう思った時だった。
最終コーナーの奥から、猛スピードで駆け抜ける大きな人影が見えた。
まさか…あの太っちょが猛追?
そう思う間もなく、その大きな人影は一気に先頭を抜き去っていく。
俺は慌てて人影を確認した。
そこには『オレオレ』と自らを指差しながら、こちらを向いて誇らしげにゴールテープを切るケンヂの姿があった。