そう言って、エナンはチラリとリリアを見た。
「そうね。それに彼はうちの手伝いをしてくれたわ。その恩を仇で返すような真似はしたくないの」
「っ…」
ダリルは納得がいかない、といった表情で剣をザックの首筋から離した。
「もしも彼が逃げ出しそうになったら、遠慮なく斬っていいから。そんな顔をするなよ」
エナンはすかさずダリルをたしなめた。
「…わかった」
ダリルは少し表情を緩めて、小さく頷いた。
「さて、ザック君…でいいかしら?あなたは私たちが何者なのかを知りたいのよね?」
「…はい」
ザックは恐る恐るといった感じで頷いた。
「短く言ってしまうと、私たちは王様の陰謀を阻止する為に活動をしているの」
「それって…反王制組織…って事ですか?」
「違うわ」
リリアは首を横に振った。
「私たちは王制に反対している訳では無いの。ただ…今の王様が…」
彼女は言葉を詰まらせて、目頭を押さえた。
エナンとダリルは沈痛な面もちで、小さく息を吐いた。
「二年前にある村で大爆発事故が起こったのを知っているか?」
「二年前…?」
ザックは眉間にしわを寄せながら、首を捻った。
「その爆発事故があった村に、リリアのお姉さんがいたんだ」
「え…えええっ!?」
彼はそれを聞いて、飛び上がらんばかりに驚いた。