グロリアは1人、街の雑貨屋にやって来た。
街の中心地…
フローズン中央通りの繁華街の一角に建つ小さな店である。
ドアを開けると、独特の雰囲気の中に線香の匂いが鼻を付く。
様々な品物が山積みする陳列コーナーを奥へと進むと、カウンターにたどり着いた。
客はいないから、店内は静かである。
立ち止まり、辺りを見回すグロリア。
「マーペスト、いる!?」
声を上げたグロリア。
シーン
返事がない。
もう一度、呼んでみるけど…
何も返事なし。
店主のマーペストは留守しているのだろうか?
しばらく待った後、グロリアは店を出ようとした。
後ろを振り向いた時、グロリアはビックリしてよろけそうになった。
鼻が異様にデカく、背が随分と小さな初老の男がいたからだ。
雑貨屋の店主であり、グロリアの友人でもあるマーペストである。
「待たせたのゥ、グロリア」
「もー、驚かさないでよビックリした!」
グロリアはハラハラしながら大きくため息。
「いやあ、スマンスマン! 倉庫内の整理をしとってのォ、お前さんが来る事をすっかり忘れとったわい」
マーペストは両手に担いでいる箱をカウンター傍にヨイショと置いた。
腰を痛めながらも、休む事なく働いているのだ。
「エルファ人形の事、何か分かった?」
マーペストは痛い腰をさすりながら立ち上がった。
「あの人形はのォ、北の魔界で生まれとる」
「やっぱり、人形工房で作られたんじゃなかったのね?」
「そうなんじゃ。しかもあの人形、大魔女王様が可愛がっていた王女人形の中の1体じゃぞ」
「ハァッ!? あのワガママ人形が!? まさかァ!」
冗談だろうと思って、グロリアは笑う。
マーペストも一緒になって笑った。
「まあまあ、コイツを見せてやろう」
そう言って…
マーペストはカウンターから1冊の本を手に取った。