「なーに、その本」
「人形総覧…人形の図鑑じゃよ」
「人形の図鑑?」
「今まで沢山作られた生きた人形の中で、代表的な物や有名な物が歴代順で紹介されている資料本じゃ」
「まさか、エルファもその中に?」
パラパラとページをめくったマーペスト。
お目当てのページを見つけると、本を広げたままグロリアに手渡した。
ページに見入ったグロリアはビックリ!
北の魔界を支配する大魔女王バルニラ・サタニアスは4体の女性人形を王女として大事にしていた。
ページには、その4体の人形たちが正装した美しい姿で写った写真が載っている。
ソフィア、ローズマリー、キャロライン、そして…
「ホレ、一番右側に写っとるじゃろう?」
「あの、エルファだわ」
グロリアは食い入るように、写真を見つめた。
「エルファは仮の名前。
本当の名前はエルミナスと言うんじゃ」
「エルミナスって言うの」
ここでグロリアは、エルファに対して疑問が湧いた。
向こうの国のVIPクラスの人形が何故、フリーラムランドにいるのか?
マーペストは説明を続けた。
「エルファ本人がフリーラムランドにちょっと住んでみたい…って言うんで、大魔女王が期間限定で許可したらしい」
「エルファ…いや、エルミナスは向こうの国ではどんな人形だったの?」
「他の3体と同様に純粋で心優しい人形だと言う評判じゃがのう…
4体の世話に直接関わった連中たちの話しじゃ…
エルミナスは頭悪くて勉強嫌い。ヤキモキでワガママらしい」
「エルミナス本人はよく…自分は気品溢れる超高級人形だ…なーんて、よく自慢しているらしいけど?」
「自分を偉そうに、見せたがるんじゃあエルミナスは」
「大魔女王様も相当、手を焼いたんじゃないの?
あんな出来損ないの王女様相手で」
「大魔女王様はとても寛大な御人じゃからのぉ…
エルミナスも大事にされておった。夢のような贅沢の生活をしとったし、欲しい物は何でも与えられたって言うからの」