エナンは挑むような目をザックに向けた。
「…」
ザックはしばらく眉間にしわを寄せて何事かを考えていたが、やがて小さく頷くと、
「言えません」
と、答えた。
「は?言えない?」
「僕は肉親を殺されてはいません。だから軽々しく肉親を殺された者の目の前で『僕だったら』なんていう仮定の話しをしたくないんです」
「…へぇ…」
「なるほど…」
エナンとリリアは感心したように何度も頷いた。
「言うじゃねえか」
ダリルはニヤリと笑って、剣を鞘に収めた。
「ザックさんはどうして賞金稼ぎになったんですか?」
リリアは少しザックに興味が持ったのか、表情を和らげて質問した。
「…その…昔出会った女性が賞金稼ぎで、その人の影響で…」
ザックは照れくさそうに笑って、頭を掻いた。
「お前、その女を追いかけて賞金稼ぎになったのか!?」
ダリル驚きの表情を浮かべた。
「い、いえ、別に追いかけた訳では…」
ザックは慌ててそれを否定した。
「動機は女性ですか…これは意外でしたね」
エナンは首を捻りながら、小さく唸った。
「女性かあ…いいよねぇ、恋って…」
リリアはうっとりとした表情で、ため息を吐いた。
「いえ、恋とかそんなんじゃ…」
―この人…やっぱりエミリーさんの子供だ…。
ザックは顔をひきつらせながら、リリアとエミリーを頭の中で重ね合わせていた。