最期の言葉を焔(ほむら)にのせて
火だるまの魔女が歌う
幾千の人々よ
私をもっと見て下さい
髪は溶け
顔は爛れ
いずれ
私の口は閉さるる
樹木の豊かな
風の中で
静かに暮らして
居たけれど
今は手を縛られて
躯体は傷だらけ
心は形を失い
居場所なく
泳いでいます
最期の言葉を焔にのせて
火だるまの魔女が歌う
誰かを
焼かぬと
気が済まぬなら
私を焼きなさい
私を千々に裂きなさい
貴方がたが
それで幸せになるのなら
私は喜んで
黒焦げになりましょう
最期の言葉を焔にのせて
火だるまの魔女が歌う
魔女を捕らえた者が
強いのではない
躯体を縛った者が
優るのではない
足元に火を点けた者が
讃歌されはしない
奴が魔女だと言った魔女に
私は決して怯えはしない
最期の言葉を焔にのせて
火だるまの魔女が歌う
心の焼け爛れた
ずぶ濡れの人々よ
誰かを焼かずに
居られぬのなら
私の衣服を焼きなさい
私の躯体を焼きなさい
例え千々に切り裂かれても
例え口が溶け歌えなくとも
それでも私は
心に絹を纏い
散り果てましょう
貴方がたの
業々と燃える心では
そのずぶ濡れの身体は
決して乾かないのだから
ずぶ濡れの身体が
冷えて震えるのなら
私を燃やせばよい
それでも私は
心に絹を纏い
散り果てましょう