一真
「井隅さんに言われたじゃねぇか、一人になるなって!
なのにどうして、あいつはいなくなっただよ!!
おかしいだろうがっ!!」
善孝
「そうだが……なにが言いたいんだ、緋山?」
一真
「例えば、抜け道や隠し部屋みたいな、なんかの仕掛けがあるとか……」
善孝
「馬鹿な……!」
南條は一笑に付した。
だが、達也は笑わなかった。
ありえない話じゃないからだ。
この手のトリックは、ミステリーなんかだとよく使われるからだ。
それにそれなら姫野さんがいなくなった理由も説明できる。
でも……そうなると………
一真
「他に姫野がいなくなった理由が説明できるのかよ!」
善孝
「そう言うがな、緋山。
まだこのペンションは、閉鎖されて日が浅い。
ましてや抜け道なんてあるはずないだろ」
一真
「閉鎖されて日が浅い?
それを誰か確実に知ってんのかよ?」
緋山のその言葉で一同、思わず顔を見合わせた。
そう言われてみれば………。
僕は記憶をさかのぼってみた。
少し前までやっていたとは、誰も言っていない。
確か奈々さんの話だと、この場所を決めたのは元老衆だったはずだ。
奈々さんも詳しく聞いてないみたいだし……。
すると緋山が南條に向かって言い放った。
緋山
「ひょっとしたら、もっと前に使われなくなっていて、いろいろと細工したかもしれないじゃねぇか」
善孝
「だが……誰がそんなことを?」
と南條が応えると緋山はこう言った。
緋山
「わかんねぇよ、んなことっ」
緋山がそう言い放つとしばらく沈黙が続いたがその沈黙を破いたのは裕也だった。
裕也
「南條さん…とりあえずもう一度、ペンションの中を捜してみませんか?」
善孝
「……わかった。
もう一度、捜してみよう」
南條がそう言うと僕たちは、三人一組になってペンションの中を隈なく捜した。
もちろん抜け道や隠し部屋なども捜したがそれらしきものはなく、姫野の姿もなかった。