「結城さん、また 明日。」「桐生さん!ナナでいいょ!」花音は、照れながら「あっ、うん。」そういうと 一人家路に着いた。
「おはよう!かのん」菜々が挨拶してきた。花音は、照れくさそうに「お、おはょ。ナナ…。」
菜々が話を続けた。「みんながね、またお友達連れて来てって。明日、パーティーやるんだけど、どう?」「行こうかな?」花音は、すぐに返事をした。
花音は、ひっかかっている事がある。
相変わらず、沙希は、菜々に近寄る事は、なかった。菜々が挨拶してもただうなずくだけで、目をあわせなかった。
花音は、沙希が自分とも溝を作ってしまうんじゃないかと怖かった。
花音にとっては、二人共同じように大切だった。
「…。(上手くいかない…。なんで…。)」どうしようもないもどかしさを感じていた。
誰かに、相談したかった。
花音は、菜々と一緒にあの、たまり場のパーティーに向かった。
花音は、自分の中の感情を聴いて欲しいという目的のほうが強かった。
そう、花音は、五十嵐に聴いて欲しいと思っていた。
そこは、手作りの飾り付けがされ、すっかり可愛らしく彩られていた。
「菜々、いったい今日は、何のパーティーなの?」花音が聴くと、「後で分かるょ」と菜々は、笑った。
しばらくすると、照明が消えた。
そこへ、数人がろうそくに火が灯った2つのケーキを持ってきた。
「ハピバースディ、トゥユウ♪…ゆいちゃん、お誕生日おめでとう!」みんなが一斉にクラッカーをならした。
そこに遊びに来ている10歳のゆいちゃんの誕生日だった。
ゆいちゃんは、いっつもお花を一輪持って花の匂いをかいでいた。ゆいちゃんは、知的に障害があった。
花音は、ニコニコしているゆいちゃんを見ていると自分も笑えた。花音は、みんなと同じように、お祝いの歌を歌っていた。
「…。(何年ぶりだろ?こんなの歌うの)」そう考えたら、こっぱずかしくなった。
顔が赤くなっているのをなんとなく実感できていた。
「…。?」もう1つのケーキの存在が、花音には、わからなかった。
すると、次の瞬間、花音にむけてクラッカーがなった。「新しいお姉さん、いらっしゃい。」みんなが声を揃えて言うと、ゆいちゃんが別の花を花音にあげた。
花音は、感情が込み上げてきたのを必至で押さえた。
心から、嬉しかった。
「泣いちゃえば…。いいんじゃない?」五十嵐が隣で呟いた。