30分ほどして、
あたしはお風呂を出た。
「あれ、起きてたんだ」
リビングのすぐ傍にあるキッチンで高峰智は冷蔵庫を開けてた。
あたしがお風呂に入る直前にベッドに入ってたから寝たのかと思ってた。
「こんな早い時間に寝れるわけないでしょ」
確かに…。
さっき20時くらいだったから、そこで寝たら幼稚園児並みの早さだ。
(じゃあなんでベッドに入ったんだよ)
あたしは心の中でそう思いながらリビングのソファーに座った。
あたしはその時、
ずっと思ってた事を言った。
「さっき…ありがとうございました」
あたしが後ろのキッチンにいる高峰智に振り返りもせずに言った。
きっと、あたしを「何が?」って顔で見てると思う。
「和樹に暴言吐いてるとき、涙止まんなくて連れてきてくれた事」
言い終わらないくらいに高峰智がキッチンから戻ってきてソファーではなくて床に座った。
「そのくらいでお礼言われても…」
「あと、」
あたしは彼の言葉をさえぎって口を開いた。
「あたしの我が儘、聞いてくれて」
今度はあたしはしっかり彼の瞳を見て言った。
その時、微かに高峰智が笑った気がした。
「どういたしまして」
なんでだろう。
今のあたしには、
この高峰智という人間が
"深い碧"には見えなかった。
――――"爽やかな青"
やっぱり本当のあなたはこっちなんだね――。